「「午後8時には閉めない」反旗を翻した外食チェーンの本気 - 毎日新聞」

 初期はウケる。苦境に立たされている中小飲食店にとって上場企業のこの振る舞いは心強い味方となり、「やれやれもっとやれ」(オレ達に代わって戦ってくれ)的な支持が得られる。これで追加支援を引き出すことができたらヒーローにもなれる。

 しかし政府にとっては、ただでさえ強制力のないショボい緊急事態宣言と言われ続けているので、協力要請に応じない事業者が増えると(ましてや上場企業が)法改正するしかないという流れになる。

 じゃないと本当に統制が取れなくなり、やったもん勝ち社会になるから。

 ましてや未だにオリンピックを開催したい政府だ。何としてでも押さえ込む必要があるだろうし、更には「緊急事態宣言を出してくれ」と要請した都知事が事態の収拾を迫られ、放置はされないだろう空気感がある。

 そもそも、政府の「協力してね」という呼びかけに自発的に応じる社会だから(だったから)こそ法律化する必要がなかっただけ。すなわち団結心とか、日本人の好きな「民度の高さ」などに委ねられてきた。

 それが見込めず、営業停止処分や罰金、逮捕などの罰則ありの法律に書き換わると、同業者達は「あいつが余計なことしてくれたおかげで」とアンチに転じる。

 「店名を行政に公表されても覚悟の上だ」とは実は覚悟ではなく、マーケティング効果の方が上回ると踏んでいるはず。行政に店名を公表されなくても、初日に話題・ニュースとなりこうやって先に広く「勇敢に戦いを挑んだ者」として認知されるから。また、仮に店名公表によって客入りが悪くなったら「雇用維持」という大義名分は果たせないどころか、結果的に従業員を窮地に追いやるから(=経営判断ミスとして人災と化する)、売上げ増によるメリットが大きいと考えていることが読み取れる。すなわちマーケティングとしての戦略。

 株価は一瞬跳ね上がったようだが、私は中長期的に見ると致命的なダメージを与えることになるだろうと予想する。

 「雇用維持」は極めて重要なこと。しかし全体として捉えると、結局のところ感染拡大防止よりも営業(利益)を選択したことにかわりないので、偶然このままパンデミックが収まらない限り、日本の調和社会の破綻の始まりと捉えられるだろう。

 「感染拡大の防止に協力しない」とは、法改正派の法解釈からすればほう助・加担と見なされる可能性が十分にある。

 いずれはコンピューターウイルスにも同じ流れが起きる。今は政治家も弁護士も知識がないからこそ、企業がウイルスに感染して個人情報を漏らそうとも「被害者」として振る舞えるだけで、全体の知識が追いついてきたら、最低限果たすべき対策を怠った(すなわち過失)として見なされるレベルの(泥棒に入られたくなければ戸締まりしてね的な)ものが多い。

 パンデミックは皆が協力し合わなければ収まらないことは欧州を見れば明白であり、私ならココでヒーローを狙うよりは黙って時短営業を選ぶ。営業自体をやめろと要請されているわけではないのだから。