価格設定の仕方。

 原価100円のものを300円(原価率1/3%)で販売している場合、原価が30円上がって130円になった時、30円値上げして330円で販売すればいいじゃないかと考える人がいる。日本人に多い。しかし原価率1/3%を維持しようとすると、390円で販売する必要がある。

 問屋、2次問屋など、中間業者が多い日本市場においては、皆が利益率を一定に保とうとすると、消費者の手元に届く際に驚くほど値段が跳ね上がってしまうので、誰か(一般的には小売店)が吸収するしかないという文化的背景があるのかもしれない。

 が、原価が30円上がったから30円値上げの考え方だと、例え値上げ前と同じ数を販売したとしても、企業会計では利益の額は同じでも利益率が低下するため、従業員1人あたりもっと沢山の数を売る必要がある。ただでさえ1人あたりの生産性の低い日本では、現場が逼迫する。

//大半の企業はお金を借りているから、利益率が低下すると、「かつかつ」に見られ融資が受けられなくなったり、返済の前倒しを迫られたりし、事業自体の息が詰まるという構造下にある。

 例えばバンジージャンプのように、ゴムにぶら下がってビヨヨ〜ンとやるとし、「このゴムは3倍に伸びます」という仕様の場合は、ゴムの長さが100メートルなら、単純計算では地上までの距離を300メートル+安全な距離(ココでは10メートルとしよう)で見積もる。

 そこでゴムの業者が極めてざっくりな性格で(笑)、納品されるゴムの個体差が±5メートルだった場合、5メートル足して305メートル+10メートルで設定してしまうと、105メートルのゴムが3倍に伸びたら315メートルだから地上に激突する。

 では315メートル+10メートルで解決かというと、安全性を確率で測定するならば、「+10メートル」のところも製造上または環境(温度や湿度)によるゴムの伸縮率の誤差の割合(最大値側)で計算した方が良く、ここを固定値にしてしまうと「安全である確率」が低下する。

 これらが企業会計でいう利益率の低下と似ていて、世間で言ういわゆる「しわ寄せ」のように、誤差や変動を単純な表面上の値で吸収してしまおうとすると、何かあったときに持たない。

 ということから、原価が100円から130円に上がったら、売値は300円から390円にしないと会計上の安全性は「前と同じ」とは言えない。

 が、日本人は「我慢強さ」が美徳だからか、“シワ”を根性論で吸収してしまおうとする傾向が強い。そうなると利益率が低下するので、前述の通り1人あたりの仕事量を増やすしかないが、生産性が低い現場だと賃金が上がらないどころか、相対的に下がっていきやすい。

 かといって、時価表示のように「本日はxxx円」とコロコロ価格が変わると消費者も予定が立たないので、「定期的な見直し」としてスケジュール化した方が良い。

 地震のひずみが溜まると大地震が起きるので、ちょこちょこ地震が起きている方が安全と言われるソレに似ている。

 アップルはこの10数年、割と為替の変動をまめに反映していて、日本法人は値上げだけでなく円高になれば値下げする。私はこのスタイルが良いと思っている。「安い時期」もあれば、消費者は買うタイミングに頭を使うようになるから。

 ありとあらゆるものの原点とも言える存在である原油の価格が10%上がるだけで、原材料が運ばれ(輸送にガソリンを使う)、それを製品化し(多くの場合石油が使われる)、工場から問屋に運ばれ、問屋から小売店に運ばれ、小売店が通信販売する際に顧客へ運ばれる際にガソリンが使われるため、最終的な小売り価格は単純に10%値上げされるわけではなく、価格が2倍にも3倍にもなったりする。

 日本の消費者にとっては、原油安+日本円高の方がメリットが大きく、今ちょうどその正反対にあり受難の時代。