第6シーズンの始まりに書いた、これまでに気付いたこと3点のうちの1つめ、トゴ革の血筋について。
私が買ったバーキン2号、3号がトゴ(Veau Togo)革だった。
知っての通り、エルメスでいちばん人気があると言われている革。
今日はそのトゴ革の特徴から、“発言”によってはバーキンが遠のくかもしれないという話。
「トゴ」と同じグレインレザー(粒状の小さなでこぼこのある革)で非常に良く似た革に「トリヨンクレマンス」(Taurillon Clemence)がある。バーキンではトゴを多く見かけるのに対し、ピコタンではトリヨンクレマンスが圧倒的に多い(全体の9割?)。
トゴには「血筋」(vein)と呼ばれる血管の跡(エルメスの完成品バッグでは雨の跡のように縦[天地]に入っている)があり、トリヨンクレマンスにはないことから、両者の見分け方は「血筋の有無」とされるほど、血筋はトゴ革の特徴として知られている。
※血筋のサンプルは、先日のウォールストリートジャーナルの記事のトップ画像を拡大するとわかりやすい。
この「血筋」に対し、エルメスに限らず革素材を専門に扱うところでは、「日本人はどちらかというと血筋を敬遠する傾向があるのに対し、欧米では天然革の持つ“表情”として認識されている」と説明されることが多い。
日本人には「木目」みたいなものと言った方が伝わりやすいか。
バーキンに一般的に使用されている革の種類は、トゴ、トリヨンクレマンス、ボックスカーフ、エプソン、スイフトなどがあり、「血筋」はその中でも「水に強く、経年による型崩れが少ない」と最も人気の高いトゴの特徴とされている。
すなわち人気のある革のバーキンを手に入れようとすると血筋がついてくる(確率が極めて高い)という構造下にある。
もうおわかりだと思うが、「バーキンが欲しい」とスタッフに伝える際、ただでさえ競争率の高いトゴを指定しつつ血筋を嫌うと、極めて希少な入荷を待つことになるということ。
例えば(数字は思いつきの感覚値)。
バーキン全体の入荷数の60%がトゴだとする。
バーキンを希望する客の90%がトゴを希望したとする。
これだけでも競争率が高い。
そしてトゴのうち血筋のないものが3%しかないとする。
すなわちトゴ指定かつトゴの特徴である血筋のないものがいいとリクエストしてしまうと、上記の例では1.8%の割合でしか存在しないバーキンを待つことになる。
私は全く気にしない派。世界最高峰とされるエルメスの革選定基準を信じているし、問題があれば交換してくれる(らしい。経験はないが)エルメスのアフターサービスを考えたら、最初から変なものは売る理由がない。
だから当然に価格差もない。
合皮はもちろん、ニセモノにはわざわざ血筋は造らないだろうことから、個人的にはないよりあった方がいいかなレベル。
が、バーキン2号(去年)、3号(今年)を買った際、スタッフがバッグを出すなり「これは血筋と呼ばれていて〜」と非常に丁寧な説明を受けた。
2号の時、私はちゃんと理解している旨伝えたところ、これを“傷”という人もいるということをとても言いづらそうに話すスタッフを見ていて、ふと思った。
トゴを希望している前提で、相場とされる500-700万円(2024年現在は多分ソレ以上)買い物してもバーキン1個目が買えない人は、過去にトゴの血筋を理由で見送ったりしていないか。
或いはディスプレーのトゴ革バッグを見て、傷モノ呼ばわりしたことがないか。
※この数年ではバーキンがディスプレーされている可能性は極めて低いことから、身近にトゴ革バーキンを持った人がいないと、そもそもトゴの血筋を見たことがない人も多いかもしれない。
バーキン1個目は買えたが2個目がなかなか出てこないとか、他の革のバーキンは買えたがトゴが全く回ってこないという人も含め、一度「血筋」についての“発言”を振り返ってみてはどうか。
もしかするとスタッフから見て「後回し」にするのにちょうどイイ材料(笑)になっているかもしれない。
と、ふと感じた次第。
それにしても。
日本の転売店(専門店?)ではトゴやトリヨンクレマンスのグレイン(粒)を「型押し」と書いているところが非常に多い。どこもコピペっぽく、出所はどこなのか。
型押しじゃない。
「自然な型押し」という説明も見かけた(笑)。「自然なみじん切り」くらい不自然な表現(笑)。
「型を押す」のは誰かと考えたら人間、すなわち人工的なものなので、「型押し」という言葉を使った時点で「自然」ではない。
「いや、トゴはシュリンクレザーだ」と主張する人がいたとしても、型押しとは意味がまるで違うし、エルメスの説明では「自然」という表現だった。
まぁ、普段「血筋はイヤ」と言っていても、いざバーキンが出てきたら迷わず購入し、即座に転売する人が多そうな気もする。問題は買ったバーキンを使ってないと、次は出ないんじゃないかということ。
ソコが『エルメスのジャストスペック枠バッグ戦略(?)』に通じるところかつ分岐点かなと個人的に思う。
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