世の中どんどん物騒になってきている。
元FBI特別捜査官のマイケル・ハリガン(中略)によればAR-15の弾丸は秒速3200フィート(約975m)で、シャッター速度が1/8000秒であればシャッターが開いている間に4/10フィート(約12センチ)飛ぶことになる。(中略)弾丸が飛んでくるとわかっていても、捉えるのはほぼ不可能です」とハリガンは語る。
計算はその通りだが、通常のカメラでも不可能じゃない。
2014年の私のブログ(1/38500秒高速閃光撮影シリーズ)では「マッハ1.31765の弾丸が目の前を通過する際、1/38500秒で11.6mm進む」と書いていて、数字は一致している。
我々は水風船の爆発の瞬間を撮っていたが、1-2回のリハーサルだけで、その後はほぼ毎回撮影に成功していた。
下記がその写真の例で、水風船を割る係と撮影する係(私)のタイミングが合う必要がある。しかも連写でなく単写で撮っていたので、ヒトは研ぎ澄まされてくると信じられない能力を発揮する。
↑まるで水の球を持っているかのよう。
今回の銃撃事件の場合、カメラマン達は主役のトランプ氏の撮影に集中しているので、弾丸の標的がトランプ氏である以上、何人もがトランプ氏を連写していれば誰かのカメラに銃弾の軌跡が収まる可能性はそれほど低くない。
夜間に車のテールランプを帯状に撮るスローシャッターと同じ状態で、1/8000秒なら弾丸の軌跡が12cm相当の帯状に写る。
以下、2013-14年頃に撮ったいくつかの写真を紹介する。いずれも1/38500秒の高速閃光(フラッシュ)で捉えた。
↑持っているのはバーンザフロアの男性ダンサーA。ほんの僅かにタイミングがずれ、風船がまだ残っている状態。
↑持っているのはバーンザフロアの女性ダンサー。風船の破片が少し写っている。
↑持っているのはバーンザフロアの男性ダンサーB。見事にタイミングが一致した。「記念撮影に」と上半身裸になったダンサーの“気合い”が功を奏したか(笑)。
という具合に、訓練を積んだ特定の誰かとだけうまくいくわけではなく、その日初めて会った人達でも何回か練習するだけでうまくいく。
そして慣れてくると下記のような信じがたいショットも(白黒化した以外)加工なしで撮れる。しかも単写で一発撮り。
↑細長い水風船を用意し、右手は水風船の先っちょを持ちつつワインボトルの先で固定し、親指(ボトルの向こう側)に風船を割る針を付ける。風船の反対側をワイングラスに予め入れておく。そしてタイミングを合わせて風船を割る瞬間にシャッターを切る。
写真では、ボトルからグラスに向かって、まるでホースから水が噴出している(しかも湾曲しながら)ように見えるが、実際にはそのままの形状の水風船を割っているだけなので水に方向感はなく、この0.0001秒後くらいには、水が重力通り真下に落ちる。
結局のところ、あらゆるもの(光も含め)は時間の最小単位(プランク時間)まで細分化すると全て静止する。
私は全く写真やカメラを勉強したことがない素人であり、先に根拠(計算)ありきで科学を再現していくのが趣味で(当時流行っていたドラマにちなんで“CSI”と呼んでいた(笑))、その流れでこの高速閃光シリーズを撮った。
ホンモノのプロのカメラマンなら、技術(とスター性)によって、奇跡の瞬間を撮影することができるだろう。
今回の事件の一連の写真は「あまりにも完璧すぎる」と言われているが、撮影すること自体は科学的に全くもって不可能じゃない。
というわけで、写真よりも警備側の話が重要なんじゃないかと私は思う。
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