「バフェットは40年間ずっと年俸10万ドル…ただし、警備にはその3倍の費用がかかっている | Business Insider Japan」

 バフェット本人がどういう方針なのかは知らないが、一般的な話をすると社長や会長或いは役職者達全員が相場よりも安い報酬設定をすることで、社内の多くの心理的な問題を封じ込めることができる。

 例えば(優秀かつ勤勉な)社長の月給(年俸÷12)が20万円だった場合、ほとんどの従業員は賃上げ交渉し辛いし、残業代の請求もし辛くなる。

 もちろん従業員は正当な(少なくとも相場通りの)賃金を請求する権利があるんだが、社風として「お金よりも仕事にやり甲斐を」感を出すことができる。その社風が合わなければ転職という選択肢もありますよ的な。いわゆる空気感による支配。

 そんな経営陣が「生産性」について語り出すと反論も難しい。1人で何十億、何百億円と稼ぐ社長の報酬が少ないと、まるで偏差値100を平均とするような1人あたりの生産性の基準ができてしまい、余所では褒められるような仕事をしても、「そのくらいで調子に乗るな」感が漂うことになる。

 リストラもしやすい。もう削るところがないことが目に見えているから、結果が出せないとすぐにでもコストが数字となって現れ居場所がなくなる。

 以前ボリス・ジョンソン現英国首相は自分のマイレージで海外出張に行くという報道を見た。「税金を使ってない」アピール。しかし出張費は正当な経費なので、役職者がそこを自腹を切ってしまうと、他の皆の交通費は税金から出てるんですよね?という話になりかねない。要は矛先が変わってしまうということ。

 スティーブ・ジョブズもアップルに復帰した当初年俸1ドルに設定していた。

 次期CEO候補に対する、

「もしかしたら、実際のその人物の市場価格よりずっと低い金額で働くことで、模範を示そうとするかもしれない。そうなれば、すばらしいことだ」と彼は付け加えた。

とは、報酬が青天井になりやすい他のアメリカ企業とうちは違うぞ的な圧力だと言える。

 だから経営層が「そういう手もあるのか」と感心する分にはいいんだが、サラリーマンがその“慎ましさ”を「経営者のカガミだ」と支持すると、自分もソレ以上の慎ましさが期待(或いは強要)されると予測する方が妥当だろうと私は思う。