ナチュラル志向や堅実派の人は、メジャーブランドを嫌ってこじんまりとした知る人ぞ知る系のオリジナル商品を高く評価する傾向がある。
※昔の好きな芸能人1位キムタク、嫌いな芸能人1位キムタクみたいな心理もあるかと思う。単にメジャー(≒エスタブリッシュメント)を嫌う心理。
大企業の製品は膨大な広告宣伝費が商品価格に転嫁されているため、「高品質志向」のマイナーブランド製品と比べ中身(有効成分など)に乏しいという理由が挙げられることが非常にしばしばある。
確かにミュージックシーンで言えば、メジャーよりインディーズの方が素直な楽曲・サウンドであり、メジャーはしっかり研磨された印象を受けることは否めない。言い換えると洗練されているんだが。
では、メジャーの広告宣伝費が果たして本当に消費者にとってマイナスに作用しているか見てみよう。
『広告宣伝費」が多いトップ300社ランキング』の売上高広告比率が高いのは任天堂の9.9%。これが商品価格に転嫁されているからマイナー企業のゲームよりも中身に乏しいと考え、聞いたこともないゲーム機に乗り換えるかというとそうではない。ハードがメジャー(=サポートが手厚く、シェアが大きい)だからこそソフトハウスが集まりソフトが充実するし(昔のWindowsかMacかも同じ)、任天堂はファブレス企業なので利益率が高く、細部にコストを投入できる余力がある。
要は収支カツカツ企業が見栄で広告宣伝費を使っているケースとは異なるということ。メジャーになればなるほど良いソフトが揃うことから、この広告宣伝費は最終的にユーザーに還元される。すなわち消費者の利益。
資生堂の6.2%もそれなり高い。5,000円の化粧品のうち310円は広告宣伝費だとすると、その310円をケチってマイナーブランドに乗り換える価値があるかというと、私はそうは思わない。
まず売上高1兆円の量産効果(スケールメリット)によって、原材料の原価が(恐らく限りなく世界一に近い水準で)安いだろうから、その分消費者に還元する余力がある。前述の広告宣伝費310円分の有効成分を入れても相殺できる(=かかった広告宣伝費分をケチる必要がない)ということ。
有効成分をケチって「高いだけで効果なし」とマイナスレビューが付くと身も蓋もないので、量産効果によって仕入れ原価を下げ、その分有効成分を沢山入れられるからユーザーから高く評価されるという循環を生み出すための広告宣伝費。
早い話、大企業とはそれ以外と同じ土俵に立っていないので、評価するためには“全体”を見る必要がある。
例えば飛行機に載せるためにSDS(安全データシート)が必要になってもマイナーブランドは出せないとか、OEMで大手に作ってもらっているだけなので、実は成分について良く知らないとか。細かく見ていくと次元が違う。
冒頭で触れた「ナチュラル志向」について触れると、ナチュラルなものとは実は作る側からすると簡単だったりする(オーガニック野菜など手間がかかるものは別として)。不純物を精製せずに済めば工程も手間も省けるし(=コスト削減で利益率が上がる)、「防腐剤無添加」と引き換えに「開封後3週間で使い切ってください」とする方が簡単だから。未開封で3年、開封後1年品質を保てるよう製造する方が研究・検証コストがかかる。
化粧品の場合、天然成分かつ「防腐剤無添加」にすると、大凡半分が水分であるクリームに指を突っ込んだ時点で菌の培養(同時に腐敗)が始まる。水分もあって自然なもの=栄養だらけだから。自分の菌を培養してそれを顔に塗れば当然トラブルが生じる。開けたての数日しか品質が保てず、最初はいい気がしたがずっと使ってるとそうでもない的なことが生じる。
更に掘り下げると、天然成分とは実はアレルギーが生じやすい。未知の成分や研究・検証対象となっていない成分が含まれているから。だから結局は安い量産品に落ち着く人が多い。有効成分だけ抽出し精製されたものの方が安全性の確認が取りやすく統計データも集まりやすいため、効果効能は多少低くても問題も起きにくいという合理性を持っている。
コレはブラックリストかホワイトリストかの話に似ていて、ブラックリストはダメな人物を列挙するため、まだダメかどうか判明していない未知の悪党が含まれている可能性がある。一方ホワイトリストは良い(例えば「家族だけ」)と決めた人しか入れないので、未知の悪党や招かざる客が含まれることがない。精製された状態だがイチバン間違いがない。
というわけで、“メジャー”だからと言って嫌う理由とヒマがあるならば、「この企業・製品はなぜメジャーになれたのか」も考える時間を割くことで思考のバランスが整うんじゃないかと私は提案したい。
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