2022年春の逸品会に行ってきた。

 客層は悪くない。上品で、昨秋の丹青会のような「何でこの人が来てるの」的な人は見かけなかった。マダムが主。

 言い換えると、古典的なデパート客層であり、変わらないことが「変われない三越」を指し示しているのかなという印象でもある。

 滅多に行かない新宿伊勢丹に行くと、30年前の田舎のアホガキ(笑)みたいな顔した男が、ディオールの巨大なショッパー(多分コートか何かだろう)を持っていたり、「その顔でどうやって稼いでいるんだろう」と感じる客層が多い。

 顔で稼ぐもんじゃないにしても、それでもある程度は取引先の印象というものがある。私なら寄りつかないというレベルの顔をよく見かけるので、その顔でも良い仕事があるんだろう。そして他のいわゆる“堅気”のサラリーマンよりも稼いでいるということだから、時代を感じずにはいられない。

 すなわち古典的なデパート客とは違った新しい層を取り込んでいると言える。伊勢丹は。かといって伊勢丹が好きかというとそうではない(笑)。

 そこの融合ということで三越・伊勢丹は経営統合したんだろうが、逸品会は学園祭の高級版みたいな域を超えず、何をやってもツマラナイ日本の代表例とも言える。華やかさに欠ける。

 ヴィトン、シャネル、エルメスなどのスーパーブランドの出店はなく、スター不在感がどこかもの悲しささえある。

 70年代ロックの時代のように「群れるなんて格好悪い」というツッパリのノリとはまた異なり、不動の地位を築きもはやデパートの手を借りる必要のないスーパーエリート達は逸品会なんかに参加しませんよ(=出店していないことがスゴい的な)という線引きにしか見えず、場合によっては数年内にデパート撤退もあり得るのかなと感じなくもない。

 フェンディやディオール、ボッテガ・ヴェネタなど、シャネルやエルメスらには及ばないが、ハイブランド上位層としていわゆる「スーパー」への“上がり”を目指しているブランドが後に続くようになると、逸品会は出店者減に泣くことになる。

 ただでさえデパート外商部の影響力の低下が嘆かれる昨今、ハイブランド勢が「別に」と背中を向け出すと後がナイ。ましてやイベントコストは削減の方向にある中だ。

 それを見越して丹青会は伊勢丹で行うようになったのかもしれないが。

 結局の所、デパートカードでポイントが付かないブランドはデパートで買うメリットがなく、ブランド本店の方が当然に品揃えが良いし、多くの消費者は本店の上得意になる方が気分も良いだろう。皆が手に入れられないような人気商品をデパート外商部が手配できればまた別の話だが、それも見込めないとなるとデパートの「ロイヤル・カスタマー」であることの意味合いが薄れる。

 流行のロレックスのデイトナマラソン然り。手に入るならどこでもイイ的な。

 そこから予想されるのはコスト削減の一環としてデパート店舗縮小であり、いずれはブランド直営の路面店及び本店に集約するという流れじゃなかろうか。スーパーブランド達は。

 すると顧客もデパートブティックのスタッフとの結びつきを重視しなくなり、むしろ本店での購入実績を積み上げることに興味を示すようになるだろう(特にエルメスなど)。

 デパートは、今一度「デパートで買うことの意味」を示す必要がある。

 私は正直なところ、この10年、15年、「日本型のおもてなし」の限界を感じている。得意とされる「きめ細やかさ」がそれほど細かくもなく、むしろ生真面目さと手堅さが煩わしさと引き換えられており、欧米ブランドの合理性がもたらす快適さ・軽快さの方が勝るようになってきている。

 そして気がつけばアップルがスーパーブランド化していて、そもそも出がデパートじゃない“場外”が育っている時代。どっちが蚊帳の外かというとデパート側。

 私は極度の面倒くさがりなので、「デパートで一通り揃う」のはありがたい。だから引き続きデパートユーザーであり続ける予定だが、客観的に見ると目と鼻の先に各ブランドの本店がある銀座においては、多くの消費者にとってデパートじゃなきゃダメな理由はもはやないのかなというのが率直なところ。

 ということを感じた。

 昔からこういう“会”には一切参加せずに来たが、時代の流れも早いので、この辺でひとまず社会科見学として覗いてみようと思った次第。