「ロシアがドル建て国債の利払い実施発表も確認できず|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト」

 これは事例として興味深い。

ドル建て国債の利払いを外貨で行ったと明らかにしました

 直前まで「ルーブルで払う」と言っていたが、「外貨で」とはドルで払った(支払い手続きをした)ということか。

ロシアは制裁によって凍結されている外貨準備から支払いの手続きをしたとみられ
シルアノフ財務相は受け取りの処理を行うかどうかは制裁を科している欧米側次第だとして、「ボールはアメリカにある」と述べました 

 微妙というか解釈が難しい。

 「アンタらが凍結しているその口座から取っていいよ」すなわち“ボールはアメリカにある”は、何となく筋が通りそうだから微妙。

 「凍結」と「差押え」は性格が異なり、差押えなら債権者(利払いを受ける権利者側)がそこから差し引くことができるが、仮にこの「凍結」を差押え同等に捉えたとしても、差押えているのが利払いを受ける権利者ではなくアメリカ合衆国である場合、その資産を処分(分配)して良いのかという点が疑問。

 もしアメリカ合衆国が「それはできない」とした場合、利払いの受け取り権利者達はアメリカ合衆国に対して「凍結口座から権利者への分配を」という裁判または差押え請求をすることになる(可能性がある)ということか。

 個人間で言うと、Aさんが債務者、Bさんが債権者、C銀行がAさんの口座を凍結していて、Aさんが「C銀行が口座を凍結しているからBさんに利払いができない。その口座からとってくれていいんだが」と言っても、C銀行は自分がAさんに貸したお金(例えば住宅ローンとか)を除き、勝手にお金を動かせない。そもそもAさんBさん間の賃借の事実や権利関係を把握していない。

 ※ロシアの例では、C銀行口座を凍結しているのが銀行の権限ではなくアメリカ合衆国の命令によってだからもっと複雑。

 そこでBさんはAさんに督促を行うが、Aさんが「手持ち現金がない」(ロシアの場合「米ドルがない」)と言って支払わない(支払えない)まま時間が断ち、延滞利息が上積みされていく。

 それでも支払われない場合は、Bさんが裁判所に権利を証明し、裁判所が認めた場合財産(C銀行の口座)の差押えが行われ、Bさんが必要なお金を受け取る。

 という流れなので、債権の利払いを受け取る権利者側がアメリカ合衆国の凍結している口座(資産)に対し裁判所へ差押えを請求することになると考えて良いのか。

 国債となると特に難しく、ロシアのSWIFTを止めて銀行送金できなくしているのも、米ドルが調達できなくしているのもアメリカ合衆国なんだからとなるともっと難しい。

 仮に債権者が「アメリカ合衆国が余計なことするから無実の我々の利益が失われている」と主張した場合、アメリカ合衆国は「ロシアが侵攻なんてするからこんなことになるんだ。全てはロシアが悪い」と主張し、ロシアは「払わないと言っているわけではなく、払う方法がナイからソコ(アメリカ)にある口座から取っていいよと言ってるんだ」と主張することになる。

 これは滅多にない事例だろう。

 多分。

 弁護士も忙しいんじゃないか。