相手国のノリをよく掴んでいて、ゼレンスキー大統領本人が内容を考えているなら非凡な才能。ましてや戦時下でゆっくり落ち着いて考えている暇もないだろうから。
アメリカはシェールオイルによって資源輸出国になってから石油に興味がなくなったせいか、トランプ政権から内向きになってしまったため、「世界の警察」と呼ばれた頃のおっせかいさが消え失せつつある。
平和な時はそのおせっかいが鬱陶しくても、情勢が緊張してくると結局世界は「アメリカ、何とかしてよ」とすがる。いわゆる“親父”のような存在。
ゼレンスキー大統領はアメリカ向け演説において、9.11や真珠湾攻撃に触れ、軍も経済も一強で安定し内向きになりつつあるアメリカにあの奇襲を想起させることで、再び超大国としてのリーダーシップと世界の警察としての役割を果たすよう求めた。
実に賢い。
一方、日本には原爆とか福島とか北方領土とか地下鉄サリン事件という直接的な表現は控え、「復興」「侵攻の津波」「住み慣れた故郷に戻りたい気持ち」「シリアと同じように、サリンなどの化学兵器を使った攻撃をロシアが今準備している」といった間接的な表現を用い、後は聞き手の理解力に委ね、更には日本や日本文化がどれだけ好きかを語るなど、日本人をよく理解している。
日本人は自己肯定感が低いからか、ちょっとでも耳が痛いことを言われるとすぐに背を向ける傾向が強く、「日本スゴい」「日本好き」と言われるのは大好き。というか、ソレしか受け付けない。
「落とし物が戻ってくるのは日本だけ」とかそういうのが好きな国民性。
そこを知り尽くしている点がニクい。
ゼレンスキー大統領を見ていると、どんなに時代が変わってもリーダーとはコミュニケーション能力(特に喋り)が極めて重要なんだということを再認識させられる。
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