エルメス客はどこまで担当者を信じることができるか。その2。

 その1に続いて。

 主たる客+その夫(または妻)のカップル客という設定で考えてみよう。

 昨年末頃だったか、「リクエスト」品は名札付きで納品され、名札名義のアカウントで(すなわち本人限定)購入する必要があると見たか聞いた。

 要は奥さんや彼女がリクエストして納品された際、当日カードの限度額が足りないから等の理由で旦那や彼の名前(アカウント)で買うということができず、現金を用意して本人が買うしかない。カードの場合、アカウントと名義が一致する必要があるから。

 ということ。

 ※私の取り寄せマフラーなどバッグでない何点かはカタカナ名札付きで出てきたので、「リクエスト」の品との見分け方がワカラナイ。

 枠ありバッグも、リクエストバッグと顧客フリーバッグがある場合、リクエストバッグは本人しか買えないことになる。

 で、リクエストが通ったかどうかワカラナイまま時間が経つと、不安や焦りをスタッフにぶつけるようになり、場合によっては「出す気があるのかないのか」と責めたててみたりする人がいる。

 そこでスタッフは、客の機嫌が悪くなってきたので「つなぎ」で顧客フリーでもまずは出すかと考え、タイミングが合えば紹介する。焦っている客は「このチャンスを逃したら次いつ回ってくるかワカラナイ」と考え、好きでもないサイズ・色であっても購入してみたりする。

 そしてそのまま年末が近づいてくると、今度は「このままお金だけ使わされて、2枠目は出ないんじゃないか」という不安と被害妄想で、再び同じことをする。

 これで2枠消化。

 問題はその後にリクエストバッグが到着した場合。

 本人が2枠消化しているので買えない。名札付きのリクエストバッグだから相方名義で買えない。12月末の入荷なら年明けまで待ってもらえるかもしれないが、通常はそのまま顧客フリー行きだろう。

 すなわち世間が愛するいわゆる“担当さん”の努力は水の泡と化する。

 年2枠消化を数年続けていれば、顧客フリーバッグは「旦那(または奥さん)のお名前で」とスタッフもすすめやすくなるかもしれないが、最初の1-2年目は客側も仕組みを理解していない分、焦って買って枠がなくなるということが起きやすいと思われる。

 という展開を山のように見てきているはずのエルメススタッフは、リクエストバッグを待っている間「このタイミングで枠バッグを出すわけにはいかない」というジレンマを抱えることになる。

 で、バッグを買ったらおとなしくなり、しばらくするとまた焦って騒ぎ出す客とは、顧客フリー品なんて紹介しようものなら迷わず買っちまう(笑)ので、下手に枠を消化させるわけにはいかない(すなわちバッグなんてないフリをしなきゃいけない)状態に陥る。

 ※「バッグは“出会い”である」とは言うものの、「出会って貰っちゃ困る」状況がある条件下で生じ、人為的に出会わないように調整されることがあるかもしれないことを示唆している。

 ではこの時スタッフはどうするか。

 のらりくらり(笑)リクエストバッグが到着するまで時間を稼ぐしかない。

 お金を持ってる客ならば、途中で他の枠なしバッグを出すのもアリだが、問題はその客の決済能力。

 今ここで120万の枠なしバッグを出し購入に至ったとする。その一週間後にリクエストバッグが到着し、果たして当該顧客は支払い可能なのかという問題。

 だからお金を使わせるわけにもいかない状況に陥る。

/*
 同様に、相方に向けて顧客フリーの枠ありバッグをすすめるにしても、主たる客が女性の場合、まだ1枠残っている女性を差し置いて、その旦那にバーキンやケリーを勧めるのも「何で?」という話になる。その点においてもまずは2枠消化を1回こなすのが最初のステップかと思う。
*/

 そういった意味でも支払い能力を客観的に示すことは重要だと言える。それがスタッフと客の商売上のコミュニケーション。

 恐らくこういった微妙な“タイミング”が誤解や被害妄想を生み、黙ってただ待ってりゃ手にできたはずのチャンスをみすみす壊してしまっている自滅型が多いんじゃないかという気がしている。

 相手(スタッフ)を責めたり疑ったりするのは簡単だが、その分関係を壊すのも簡単だということであり、「信じると決めたら信じる」が得策だと私は昔から思っている。エルメスに限らず。

 で「いつ希望を伝えたかとリクエスト(パリオーダー)締め日は非常に重要な関係性」についてだが、リクエストバッグの締め日が01月と07月末だとし、それを翌月の02月と08月にパリへオーダーすると仮定し話を進める。

 初年度の買い物を始めたのが01月だとすると、最初の締め日である01月末の分には通常間に合わない。

 そして03月あたりにいわゆる1:1説を満たす購入額150万円に達し(月50万円のペース)、「バーキンが欲しい」と伝えたとする。

 このリクエストが通ったとして、次の最初の締め日は07月末、オーダーが08月、そこから数ヶ月後の納品なので、月50万円のペースで買い物を続けると、リクエストバッグが届くだろう12月あたりには購入額600万円に達している頃。

 普通に考えたら途中で不安になって駄々をこねる(笑)と思われる。

 そこで購入額300万円あたり(06月頃)で顧客フリーで1枠目を消化し、購入額450万円あたり(09月頃)に2枠目を焦り出すという流れが多いんじゃないかろうか。

 そうやって冒頭に書いたジレンマが生じる。

/*
 希望通りのバッグが手に入る人とはリクエストバッグの納品まで待てる人で、それ以外の人はよほどの偶然を除いて、常に顧客フリーバッグで希望のスペックと異なるバッグを買って枠を消化しているのかもしれない。
*/

 いわゆる“リクエスト”が通ったのか否か、それがわかれば客側も待てるのかもしれないが、エルメス業界は病的なくらい不安症な人が多い印象がある。

 人(スタッフ)を信じることができない性格なのか、常に騙されてきて「また今回も」というトラウマや体験が災いしているのか、はたまた自分の決断がいつも裏目に出て自分自身を信じられなくなっているのか。

 どれであっても担当スタッフを責める理由にはならないし、仕組みについて種明かしできないエルメス側の事情も考慮すると、結局は信じて待つしかない。

と、私は思っている。

 私自身の来年枠の予想をすると、01月に1枠目、06-08月に2枠目かなというのが、これまでに感じ取ったいわゆる“実績”評価とエルメスのリズムによる着地点かなという気がしている。

 というわけで、そんなにいわゆる“担当さん”が好きなら、信じて待てばというのが私の見解。