スパで若い女性セラピストとの会話。

 数ヶ月前スパでアロマトリートメントを受けた際、とても若い(多分20代前半)可愛らしい女性セラピストにあたり、顔を合わせた瞬間から緊張しているのが伝わってきた。

 精油選びはもちろん、マッサージが始まっても声や受け答えがぎこちなく、接客業とは思えないほど人見知り感が強く、何か緊張がほぐれるような話はないかとあれこれ投げかけてみた。

 割とツマラナイ冗談がウケたようで、ようやく緊張がほぐれてきたのか少しずつ会話がスムーズになり、「中年のおっさん」の話をするとついにノッてきた。

 セラピスト「もぉ〜っ、本当におじさんって何なんですかぁーっ、ワケわからないですぅー」(「あの生き物は」と言わんばかりに)

と返ってきたので、「何かあったんですか?」と問うてみると、

 セラピスト「夜、道を歩いていたら、おじさんが後ろから追い越してきて、わざわざ私のすぐ目の前を歩くんです。5人くらい横に並んで歩けるような幅の歩道なんですけど。横断歩道で止まった時離れて待ってたんですけど、わざわざ私の目の前に来て歩き出して。そして次の横断歩道で止まった時も離れて待ってたんですけど、青になったらまた私の目の前に来て歩き出して。整列して歩かなきゃいけないんですかこの道って」

とマシンガントークが始まった。

 「それはかなり鬱陶しいオッサンですねー」と返してみると、

 セラピスト「そうなんですよぉー。そしたら今度はおならしてきて

 なんと。

 おならしてきた。

 おならをしてくる。

 置き換えてみると、「ガン飛ばしてきた」とかそういう系統の表現だと思うが、ガン飛ばすのは目線に方向感があるが、おならという気体には私が知る限り方向感がない。

 出力後たちまち大気中に拡散され薄められていき、風と共に去りぬ的に消えてなくなるものだと思っていたが。パリで吸う葉巻のケムリのように。

 おならをしてきた。

 特定の誰かにめがけて放つことができるのか、最近の中年のおっさんは。

 それともセラピストの被害妄想か。

 いや、私にはホラー映画さながらに、中年のオッサンがおならをしながらうら若き乙女に向かっくるそんな迫り来る何かを感じた。

 もはやここまでか的な。

 個室は緊張に包まれた(笑)。

 私は尋ねた。「あなたに向かっておならしてきたんですか?」

 セラピスト「そうなんですよぉー。周りに誰もいなくて。それがスゴい音で。ブーッ、ブベッ、ブリッ、ブブッ、ブオォッて何回も。どう考えても私に向けてしてて」

 私「そっ、それは・・・」

 セラピスト「何で歩きながらできるのかって。それがまた臭くて。すぐ横に移動したんですけど、ニオイがついてくるんですよ」

 私「自動追尾機能搭載ですか」

 セラピスト「そうとしか思えませんよ、ホントに。仕事帰りだったので、何でおじさんのおならのニオイをかぎながら家に帰らなきゃ行けないのかなって。私何か悪いことしたのかなって」

 私「っ、とっ、とんだ災難でしたね」

 セラピスト「これも日頃の行いなんですかね。おばあちゃんからいつも言われてたので」

 私「いや(笑)、自分を責める必要は全くナイですよ」

 当初の緊張からリラックスしてくれたのは良いが、心開いてくれたのか、それがおならの話から始まるとは。

 私はこの若い女性セラピストの何を引き出したのか(笑)。

 それにしてもそのオッサン。逮捕級。

 その後は隣の部屋に笑い声が聞こえるんじゃないかというくらい笑い続けていた。

 で、帰り、

 セラピスト「とても楽しかったです。私人見知りなのでこんなにお話できたの初めてで。次回是非指名してください!」

と言って、メッセージが書かれた名刺を渡された。

 私「では次回は指名で来ますね」

 セラピスト「明日と明後日も出勤してます!」

 明日来いというのか(笑)。

 で、次に行ったとき、受付の女性スタッフから「彼女(セラピスト)があんなに楽しそうなところをと言うか人と喋っているのを初めて見ました。ありがとうございます」と言われた(笑)。

 前回帰り際を見て驚いたそうで、普段無口で職場での人付き合いも全くしない人らしい。

 何となくだが当該セラピストは周りにはコミュニケーション能力の低い人だと思われてる感がある。しかし話し出すと会話のリズムもイイし感受性も高く、もしかすると高知能型で周囲との波長の問題なのかなと私は思う。

 セラピストと顔を合わせると、メイクにとても気合いが入っているのがワカッタので、2回目はおならの話にならないよう慎重にかつ丁寧に話を進めていった(笑)。

 ま、元々おならは私が提供したテーマじゃないんだが(笑)。

 家に帰ってすぐに書き起こしたが、何を躊躇ったのか投稿するまでに時間がかかってしまった(笑)。