「拳振り上げ感情爆発「メルケル首相」厳戒ロックダウンの成否:熊谷徹 | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト」

 「ドイツだけはちゃんとしている」時代は終わり、欧州の優等生ではなくなった。

 国民が“自由”に明け暮れ統制がとれない状態。パンデミックに立ち向かうには皆が足並み揃えて協力・配慮し合う必要があるが、皆がマスクをすればオレはしないという昔の中学生のようなアイデンティティが蔓延している。

 「自由なんだから協力しない」はただの利己主義であり、国や組織が協力を強く要請すると、「強制される筋合いはない」「自由が脅かされている」と騒ぎ出すから手に負えない。

 さすがにこの時点でマスク反対運動はない。

 利他的になれという話ではなく、利己的であっても、点(ミクロ)で見れば「マスクをするかしないかはオレの自由」は最もだが、全体(マクロ)で見れば、その選択によってパンデミックが長引き、経済的な損失が長期化し、いずれ自らも職を失うことになると考えることができれば、今は協力する方が得策(自分の将来的な利益のため)という結論が出る。

 よって利己的であっても今は積極的に協力する(利他的な)人達と同じ結論に行き着き自然な団結が生じるはずなんだが、そうならないということは思考が細切れの状態(場当たり的な生き方)。

 傾向としては、ドイツから以北(バルト三国を除く)が似た傾向がある。北欧3国+ドイツ、オランダ、デンマーク、ベルギー。民族としては主にゲルマン系。オーストリアは本来ドイツに極めて近いはずだが、割とニュートラルな印象がある。スイス派か。

 この先EUの統制が取れなくなってくると(元々ドイツが中心となって集まった連合だから)、ラテン民族系(フランス、イタリア)のEU離脱騒動が起きるかもしれない。民族的にはスペイン、ポルトガルもだが、国の規模的に離脱するには頼りないので、可能性があるのはフランスからだろう。イタリアはスポンサー次第。ロシアが付く可能性が高い。

 そうなるとロシアとの中継地点であるポーランドがどちら側に付くかでEU諸国が分断される。バルト三国は主にスラブ系(ロシア、ポーランドと同じ)だからポーランドグループとして捉え、芸術や味の好みなど感性面から見てもラテン民族の方が相性が良い印象があり、ゲルマン系とラテン・スラブ民族に分かれるかもしれない。

 イギリスEU離脱後、日本企業はこれまで通りEU市場へアクセスするためオランダに本社を移す(した)ところが多い。長期的に見れば(EU分断が生じたら)ゲルマン連合寄りの流れ。

 製造業には港が必要なので選択肢が少ない。私ならどうしても選ばなきゃいけなくなったらフランスを選ぶ。フランスが離脱するときはイギリスと再び自由協定を結ぶだろうことから、10年、15年後は日英仏連合が私には自然に見える。