「日本中のお味噌屋さんが844万円よりも高い給料を得ることは無理だということだ」。そう憤るのは、自身と弟の「役員報酬」の額を巡って国税当局と法廷で争っている「松井味噌」(兵庫県・明石市)の松井健一社長だ。
松井味噌の社長として争っているんじゃなくて、グループ内の京醍醐味噌の役員報酬の額についてであり、原告も京醍醐味噌。
問題となっているのはグループ企業の1社、「京醍醐味噌」。味噌やカレー、ラーメンスープなどの開発を行い、生産は外部に委託しているため、社員数は0、役員は松井氏を含む2人のみ。
そこで松井味噌の年商が2008年時点で200億円だと主張しても、京醍醐味噌の役員報酬を決める上で何も関係ない。
国税当局が「京醍醐味噌」の売り上げの半分から2倍の企業を10社選んで、その平均役員報酬と比較して、適正額を「844万円」と示したことに違和感を訴えた。
税務署や国税局は、同規模の業界水準から適正額を示すことはしても決定も命令もしない。
現に「4年分(2012年〜2016年)の役員報酬21億5100万円のうち、約18億3956万円分を「不相当に高額」と指摘」とあるので、3億1144万円は認められているということ。4年で割ると7,786万円で、役員2人で均等割りすると年俸3,893万円は否認されていないので、「日本中のお味噌屋さんが844万円よりも高い給料を得ることは無理だということだ」と主張するのは無理がある。
感情優位の論理破綻型で、こういうタイプは裁判で負ける。
素人考えでよく出てくるのは、翌年の想定利益を上回る役員報酬を設定すれば常に赤字となり法人税がかからないというアイディア(?)。
利益を上回る額を設定するのだから当然に支払えず、未払い金が蓄積する。役員が他人だと未払いを不当だとして裁判になったりするが、弟だったら事前合意で解決する。
すると累損が積み上がり、ずっと赤字決算=法人税ナシというシナリオ。
が、誰でも考えつくことなので、それを予め防ぐために業種(及び従業員数)ごとの役員報酬相場を参照する仕組みになっていて、逸脱していれば「社会通念上、妥当とは言えない」と判断される。
かといっていくらにしなさいとは言われない。
ベトナム事業については「収益は生じていない」ことを重要視。弟の「赴任が具体化せず、ベトナム新規事業再開のめどが立っていない状況において月2億5000万円もの給与の支給を(中略)続けるということは、企業の意思決定としておよそ合理的なものとはいい難い」とした。
実体のないベトナム事業を見て、ココで目をつぶると次は何をするかわからないということで先手を打ったということじゃなかろうか。
この記事では松井味噌について「1980年代に約2億円だった年商は、2020年度には約80億円まで成長している」としており、冒頭の記事の「2008年に200億円」から激減したということか。もしその最中で月2.5億円、年30億円の役員報酬を設定したのであれば、当然に認められないだろう。
いずれにせよどちらの記事も問題の本質である京醍醐味噌の売上と純利益について触れてないので、報道自体も素人なのかなと思う。
私は20年前の時点で自身の役員報酬を年俸2.5億円に設定したが(その後変えず)、3年後の税務調査及びそれ以降も全く何もケチは付かなかった。
京醍醐味噌が「卸売業」として分類されたように、私も分類上では最も近いかなという平均役員報酬の低い業種に分類されたが、私の役員報酬の決定に何の影響も及ぼしていない。
税務調査で指摘される時は、表に出ていない何かに問題があるということ。
普通に考えたら税理士がとめて終わるところなので、一緒になって「えっ?」という主張をしている税理士を変えるところから始めた方がイイんじゃないか。
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