専門家からは本来の炎上とはかけ離れた「非実在型炎上」を疑う声もある。
確かに「炎上」という程の騒ぎでもないのに炎上したことになっているものも多い。
で、企業側もそれを逆手にとって、敢えて否定的な意見が一定数出るだろうギリギリのラインを攻める手法も増えている。
SNSでは否定的な意見の方が注目されやすいので、これを外野(あたかもそう見える人員)が「新CMが炎上」とたきつけることで、普段はいかに排除・スルーするかという邪魔者扱いのCMを大衆はわざわざ探してでも見に行く。
「消費者に自発的にCMを探させる」のは極めてコストパフォーマンスが高く(高額なテレビCM枠を買わなくて済む)、広告宣伝の制作側として最高位の出来。
よって大した反対意見でないものもとりあえず「炎上」ということにし皆にCMを見に行かせ、「全然問題ないじゃん」(=騒いでいる方がおかしい)という結果(消費者側のジャッジ)を待つ方がより企業側の高感度が上がり応援する人が増え一石二鳥。
言うまでもなく、実際にCMを見に行って「確かに問題がある」と感じる人の方が多いと逆効果なので、思いつきの値だが5-10%くらい(*1)の人達がアンチ反応を起こしそうなラインがちょうど良い。
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(*1)私自身が色覚異常なので敢えて色に例えると、赤が時と場合によって緑や茶色に見えてしまう人の数くらい。文句を言ったとしても、正常な人から見たら「え?」(=勘違いした方がおかしい)で終わるから。
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これらは今に始まった手法ではなく、20年ちょっと前のインターネット掲示板全盛期の頃からチラホラ使われていた。
例えば、「請求書を発行する」というところをわざと「請求書を発酵する」と書く(誤変換する。またはミスに気付いても放置する)。すると他人のミスを指摘し揚げ足を取らないと気が済まないアンチ勢が一斉に飛びつき「請求書が腐ったらマズイだろ。バカじゃないの?」と騒ぎだし、その効果でインプレッションが増える(アンチを無料の盛り上げ要員として使う)というやり方。
で、その騒ぎを見て原文を確認した普通の人達は「ただの誤変換に何騒いでんの?」と反応し、騒いだ人達が「幼稚だ」と批判されて終わるという流れ。
こういった手法が一般化したことで、間違いを指摘するのも周りの出方を見てからという一旦様子見の人達が増え一時は鎮まっていたが、コロナ以降再び活性化しているように感じるのは、パンデミックによって(休業・解雇など)下記の社会的無力感を感じる人が増えたからかもしれない。
気に入らないものにいろいろと無理筋な理由をつけて攻撃的なバッシングや誹謗(ひぼう)中傷を繰り返す人たちは、自己肯定感が低く、『自分はやれるんだ』という満たされない思いを抱えていることも多い」と分析する。
暴走族と同じで迷惑行為でしか注目が得られないと、それが社会に対する自己表現の唯一の選択肢と化し、リソース(時間・労力)を一点に惜しみなく投入する。
一方社会の支配者側はそれらを排除したり非難するよりは「どうやって使うか」に目を向け、炎上商法が生み出されたと考えられる。
タダで使えるもの(ひと)は何でも使うという時代になった。
「赤いきつね」のCMがどういう意図だったかは知らないが、「炎上」という言葉にメディアもSNSも振り回されないようにした方が良い。
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