ビタミンKは栄養素の中では地味だが面白い存在で、摂取した食物を腸内細菌が分解する過程で産生されることから、記事にもあるように抗生物質を飲んでいる人は不足しやすい。
ビタミンKを産生する菌が死滅してしまうため。
一般的にセフェム系抗生物質を指摘される。日本では歯医者がよく使う広域抗菌薬。フロモックスとかセフゾンとか。
もしかすると強力な殺菌作用を持つにんにく大量摂取でも一時的に同じことが生じるかもしれない。
見方を変えると、腸内細菌叢のバランスが悪いとどれだけ栄養を経口摂取しても吸収されずに出ていってしまう可能性がある。
※経口摂取と静脈摂取(注射、点滴)では代謝経路が異なる。
ビタミンKはワルファリンやナットウキナーゼとは反対の作用があり、足りないと血液が固まりにくくなり、血栓ができにくい代わりに血が止まりにくいという問題が生じる。
フィブリンとプラスミンの関係に似ている。
またビタミンKが不足すると、肝細胞癌マーカーであるPIVKA-IIの値が上昇する。
ワルファリン(=ビタミンK拮抗薬)を飲んでいると当然にPIVKA-IIの値が上がる。
機序としては、正常な肝臓でビタミンKを補酵素としてプロトロンビンが生成されるところ、一般的に不足することが珍しいとされているビタミンKが欠乏していると血液凝固活性をもたない異常プロトロンビンが血中に放出されるため、通常はこの値が上がることで肝細胞癌(=正常な凝固因子を作れない状態)マーカーとして機能する。
例として、抗生物質を飲んで腸内細菌が死滅しビタミンKが産生されず欠乏したタイミングで肝細胞癌マーカーであるPIVKA-IIの検査を受けたら異常値を示し(一方でAFPは正常)、肝細胞癌を疑われて精密検査となった。というケース。
そこでビタミンKサプリを飲んでしまうとPIVKA-IIの値が下がるため、もし本当に肝細胞癌の疑いがある場合は発見が遅れるので注意が必要。
PIVKA-IIの検査は、自費の人間ドックに含まれているか検査オプションとして用意されていることが多い。
ちなみにビタミンKは脂溶性ビタミンなので、摂りすぎると蓄積する。
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