中学生の頃からバッハが好きで、その中でもチェンバロの音色が特に好き。
それ以来基本はバロック音楽かロック(笑)(いわゆるネオクラシカルヘビーメタル)しか聴かず、ピアノよりチェンバロが欲しく「チェンバロって普通に売ってるんですか」と楽器店で尋ねたことがある(笑)。売ってなかった(笑)。
習ったわけでもなく、インプロバイズで楽器(弦も鍵盤も)を弾いても勝手にバロッキーなメロディが出てくるというくらい私にとって自然な旋律で相性が良い。
たまに行くお寿司屋さんは、いつもバッハを中心としたバロック音楽が流れていて居心地が良く、淡々と握られ淡々と目の前に差し出されるお寿司カウンターにとても合う。
シャンパンは一種類しかないお店なので毎回同じものを飲んでいるが、もし自分で選ぶならいわゆるパーティーシャンパンよりも泡が繊細なものが良い。
で、そのお店で珍しくベートーベンが流れていた。
派手な交響曲ではなく協奏曲だったので、食事を邪魔しない程度に大人しいが、ベートーベンなので展開は劇的。
すると味覚まで変わり、よりドラマティックな味わいが恋しくなるので面白い。
五感は全て連動していて、脳がそれらの知覚を統合し、カクテル化され“認知”が生じる。
結局ベートーベンの協奏曲と最も美しいマリアージュを奏でたのは初鰹(かつお)だった(笑)。
カツオと言えば大衆的だが、味的に決して簡単な魚ではない。癖が強いので手強い。
ネタの上に僅かに添えてあったおろしショウガとポン酢(?)の絶妙なハーモニーが、一つ間違えばすぐにでも発狂しそうなベートーベンに似ている気がした(笑)。紙一重的な。
一方バッハはどうだろうか。
Partita No.2 IV. Gigue(ハーン女史)あたりで酢締めのコハダを3貫くらい連続で食べれば、感覚が研ぎ澄まされ知覚過敏(笑)になるか、ゲシュタルト崩壊を起こすかのどちらかかなというこれまた極限系の味わい(笑)。
いずれにせよ6声のリチェルカーレの旋律が精確に聴き取れるようになる(笑)。
コハダも安い魚だが、なかなか大変らしい。
技術だけでもダメ、知識だけでもダメ、感性だけでもダメ。全てが融合・統合され完成品として表現できた時に秀作・傑作が生まれ、食に関しては味だけでなく、空間もカトラリーも、音楽も合わせて楽しみたいところが、なかなか全部が揃っているお店がない。
日本の職人気質というと大凡一点集中型なので、多方面に秀でた人が少ない。
意外に外国人シェフがお寿司を極めた時に、私好みに仕上がるのかもという気がしている。
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