ピグマリオン効果。

 教育心理学領域で良く出てくる単語で「やればできる」系の考え方。

 「ハーバード式突発性学習能力予測テスト」などともっともらしい名前を付けて普通のテストを行う。そしてテストの結果「この生徒は今後数ヶ月で成績が伸びる」と教師に伝える(教師はこの“嘘”を知らない)。すると本当に対象生徒の成績が伸びる。しかしテストの結果ではなくただランダムに選ばれただけの生徒。これは教師がその権威あるっぽいテストの結果を信じ、当該生徒に対し力が入るからだとされている。または「期待されることの効果」とされている。

 教師が本気で取り組めば伸びる、生徒は期待されるとやる気を出すという考え方。

 だから教育心理学の領域なんだろう。教師は「遺伝子で決まる」とは言えないし、いかにやる気を出させるかが仕事だから。

 実際にヒトは期待されると伸びる。期待されないとやる気をなくす。

 しかしこの手法はインターネット社会では上手く機能しない。

 適当に名付けられた「ハーバード式突発性学習能力予測テスト」を教師が検索してみたら嘘がバレるから。もし生徒に「君はあの“ハーバード式突発性学習能力予測テスト”で成績が伸びると出たんだから将来楽しみだよ!」と伝えた場合、生徒やその保護者が検索してみた場合も同じ。

 「そんなテストないんですけど」という騒ぎになる。

 安っぽいエサでやる気をださせようとしたのかという残念さによってむしろ下がりかねない。

 昔は調べようがなかったから成り立っていた。今でも40代以降はインターネットで見たものを自分で考えたかのように喋る人がいる。2〜3個のキーワードを入れるだけで元ネタがわかるという時代に。

 宗教が流行らなくなったのも同じで、検索すればいかに非科学的か、おかしな集団かという情報が山のように出てくるものだから、信者達の気持ちが続かない。

 だから私はオンラインIQテストは自己啓発になったとしても、その結果をもってして「オレはIQが高いんだからもっと評価されるべきだ」と考えることはすすめない。「評価されるべきだ」とは、他人の評価が間違っている、評価能力がないという前提にあるから、結局は人のせい

 その人間性を拒絶されてますます居場所がなくなるのが社会であるということを先に学ぶ必要がある。

教育経済学者の中室牧子(『「学力」の経済学』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2015年p.48)では“「あなたはやればできるのよ」などといって、むやみやたらに子どもをほめると、実力の伴わないナルシストを育てることになりかねません。とくに、子どもの成績がよくないときはなおさらです”と批判している。ほめてはいけない、ではなくて、そのほめ方が重要だという。 ---Wikipedia

 私もその考え方を支持する。現実を知らない打たれ弱いナルシストが増えると、そのサポート・補填に回る人達が疲弊するから。他人にコストを強いると必ずソレが自分に返ってくる。

 他人に評価され歓迎されるためには、与える側に立つしかない。

ハーバード式突発性学習能力予測テストと名づけた普通の知能テストを行ない、学級担任には、今後数ヶ月の間に成績が伸びてくる学習者を割り出すための検査であると説明した。しかし、実際のところ検査には何の意味もなく、実験施行者は、検査の結果と関係なく無作為に選ばれた児童の名簿を学級担任に見せて、この名簿に記載されている児童が、今後数ヶ月の間に成績が伸びる子供達だと伝えた。その後、学級担任は、子供達の成績が向上するという期待を込めて、その子供達を見ていたが、確かに成績が向上していった。報告論文の主張では成績が向上した原因としては、学級担任が子供達に対して、期待のこもった眼差しを向けたこと。さらに、子供達も期待されていることを意識するため、成績が向上していったと主張されている。