どこのデパートも外商売上が好調らしく、実際に外商ブームっぽさを感じる。エルメスやロレックスなどの需要によって。
営業会社が営業の成果を報告しないと株主がウルサイのはわかるが、現実的には外商部の営業努力によって売上が伸びているかというとそうではない気がする。
元々外商部が目を付ける(インビテーションを送る)顧客というのは、当該デパートでそれなりにお金を使っている人なので、以前は海外で買っていたブランド品の購入が、パンデミックによって内需増として上積みされている可能性が高い。
そこに極度の円安と来たので、制限が解除されても欧州に行って買うメリットが薄れたどころか、デパートカードの10%還元を受けると日本で買った方がちょっと安い品もある。いずれは値上げされ、再び現地の方が安くなるだろうが。
すなわち消費者側の賢い選択によって売上が増しているのだとすれば、そこを外商努力と勘違いすると後に響く。
だからどこのデパートも一律に外商売上が増えている(*1)と考えられる。努力によるものであれば、一部のデパートに限られるだろうから。
すなわち環境要因。
もちろん、入国制限が緩和されたことでインバウンド需要が増し、為替が反転する頃には内需と入れ替わり、その方が売上自体は伸びると思うが、これもまたデパートの営業努力によるものではなく、政府の「観光大国へ」という政策の成果。
(*1)外商カードで決済された分は全部外商部の売上として計上しているんじゃないかと推察され、内訳としては外商担当者と顔を合わせず購入されたものの方が多い、或いはほとんどかもしれない。またブティックの既存常連客を外商部が横取りしているケースもあり、社内区分が移動しただけの可能性もあるため、内訳よりは百貨店事業の売上推移を見て判定する方が確実だろう。
確かに三越・伊勢丹は昔ながらの「外商」というスタイルから、もう少しカジュアルなストアアテンダントというサービスを外商部がやりはじめたが、高額商品の主軸である服飾・宝飾分野で言えば、これで伸びる売上とは買い物下手なデパート初心者向けなので、自分のファッションスタイルが決まっていて、かつ各ブランドの方向性を理解している中上級者向きではない。
問題は、どこを見ても日本がイチバン手薄な部分が弱いままで、今後回復するだろうインバウンド需要に向けて英語対応できるスタッフの確保の方がはるかに営業努力が実ると思うが。特に円安という追い風を利用しない手はない。
パンデミック前、通訳・翻訳のために雇われていた中国人がいなくなり、国産ブランドの英語ページも更新されなくなったどころか消し去ってしまったところも多く、どうにもこうにも英語を含めた外国語対応が弱い日本。
最終的には英語も中国語もできる中国人に置き換えられるのか。
5年後のデパートは、中国人客と中国人スタッフに支えられているだろう図しか浮かばない。少なくとも外資ブティックは中国人の採用が進んでいるので、デパート側もそろそろ外国語と向き合わなきゃいけない時期じゃないかと思う。
世界一の登録者数を誇るユーチューバーPewDiePieが今年05月に日本に移住したこともあり、白人圏からの観光客も増えるだろう。数年前から国産ウイスキーが手に入らなくなったように。
現時点では、通訳なんて必要なときにアルバイトで雇えばいいという感覚だろうが、「居てもらわなきゃ困る」となった時には手遅れだし、インバウンド需要によってスタッフ1人あたりが生み出す売上が逆転すると、日本人スタッフの生産性の低さが目立つようになる。そして「日本人スタッフをいかに切るか」が“営業努力”とされる皮肉な時代が訪れる準備をしておいた方がいい。
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