「トランプ氏、利下げ圧力強めるか 雇用統計の修正、パウエル氏に逆風 [トランプ再来][トランプ関税]:朝日新聞」

景気と密接に絡む非農業部門の就業者数の伸び(3カ月平均)は3万5千人で、新型コロナ禍以来最低だった。5、6月の就業者数の伸びが、当初発表よりも25万人超も下方修正されたためだ。
 今回の雇用統計はFRBの金融政策にも重大な意味を持つ。FRBが7月29、30日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)は、この25万人超も過大だった就業者数の伸びを前提に、「労働市場は堅調」と見込み、政策金利を5会合連続で据え置いたからだ。

 トランプ大統領はこの下方修正は捏造されたデータだと主張しているが、どんなにひいき目に見てもトランプ関税発表後の04月以降、世界経済全体が萎縮している印象がある。前稿に通じるところ。

 が、結果としてトランプ大統領が望む利下げの方向だが、気になるのはアメリカの利下げは1-2テンポ遅れていて、日銀の利上げも2-3テンポ遅れているように私には見える。

 格差が開きすぎ、富裕層側が多くのデータの平均値を押し上げすぎていて、数字だけで実体を追えなくなっているのかもしれない。

 世界経済に影響を与えるアメリカの動向を見定める必要がある日銀が出遅れるのは多少やむを得ないにしても、アメリカの利下げと日本の利上げが両者の間を取ってあと2テンポ早く進んでいれば、どんなに手堅く見積もっても昨年中にドル円=130円台に、現時点で120円台に落ち着いていたんじゃないかと感じる。

 この1年のレートから見たら極度の円高だが、本来は当たり前の水準。

 120円台と145円(去年は160円)とでは、日本製品と米国製品の相手国における価格競争力がまるで変わってくるので(ひては米側から見た対日貿易赤字の根拠とされる)、為替がもっと早くまともな水準に達していれば、関税交渉ももう少し日本側有利に進んだだろう。

 日本から見れば、いや円高になったら輸出が減ると捉えがちなところだが、米側から見れば日本製品の価格競争力が薄れ、トランプ大統領が考える公平性が是正されるという点において交渉しやすくなる。

 その結果関税率が下がれば、目減りした価格競争力で失われる輸出額(*1)を関税率が数%下がることで相殺されるどころかお釣りがくるかもしれない。

 (*1)円安で日本製品が安いから売れているのか、日本製品が魅力的だから売れているのかは見極める必要があるが、少なくとも最大の争点となっている日本車に関しては多少の円高は許容できるだろう。

 トランプ大統領は、アメリカ産の車をがもっと売れるように障壁(審査基準や円安誘導など)をなくし公平な競争環境を整えるよう迫っているだけなので、環境を整えた上で米国消費者は(円高で割高な)日本車を選び、日本の消費者は(円高で割安となった)米国車を選ばなかったという結果が出たら、それは自由競争下で下された市場の決定でしかないので、トランプ大統領の性格上それ以上ケチをつけてくることはないと私は思っている。

 ま、関税率が決定してしまったので、日本政府としてはだったらもっと円安にして関税分の価格競争率を取り返そうなんて方向感かもしれないが、そんなことをしていると四半期ごとに見直される予定の関税率が上がりかねない。

 結局のところ、ドル円相場の是正が全てじゃないかというのが私の見解。