パーセプトロンは、60年以上前に心理学者・計算機科学者のフランク・ローゼンブラットが考案した考え方。今でも人工知能の基本であり、これを学ぶことで、思考の偏りや変質性がどのように生じるのかを数字として確認することができる。
xは入力(情報や刺激)。何種類もある。
wは重み(重要度)。xの数だけある。
bは傾向(全体における優先度)。1つのグループで1つ。
yは最終的な結果
(*1) y = x[n] * y[n] + x[n] * y[n] ... + b が0以下か0よりも大きいかで判定する。すなわちy<=0なら何もなし 、y>0なら発火。※「*」はかけ算。
女性の恋愛スイッチ(発火)に例えてみよう。当該女性の恋愛スイッチが入りそうな入力情報(刺激)は下記の3つだとする。これを恋愛発火要素グループと呼んでみる。
■恋愛発火要素グループ
x[0]:ハンサム(値は1)
x[1]:優しい(値は1)
x[2]:賢い(値は1)
ただのラベル(識別子)であり言葉自体に優劣はないので値は全部1。「育ちが良い」「お金持ち」「お洒落」など何でもイイ。
当該女性におけるこの3つの重要度はそれぞれ下記だとする。
w[0]:0.3
w[1]:0.4
w[2]:0.3
まとめると、
x[0]:ハンサム(1) w[0]:0.3
x[1]:優しい(1) w[1]:0.4
x[2]:賢い(1) w[2]:0.3
(*1)の式に当てはめると、
y = x[0] * w[0] + x[1] * w[1] + x[2] * w[2] + b
となり代入すると、
(*2) y = 1 * 0.3 + 1 * 0.4 + 1 * 0.3 + b(まだ未設定)
となる。
合計1。これでは0より大きくなるのは当たり前だし、何でも発火する(火事になる)ことが確定している。
そこで「b」のバイアス(傾向)を設定する。イメージとしては全体における「恋愛発火要素グループ」の優先度(≒性格的傾向)。「今は仕事が忙しいから恋愛スイッチが入りにくい」という仮定で、例えば -1 という値をセットする。
(*2)の式に代入すると、
y = 1 * 0.3 + 1 * 0.4 + 1 * 0.3 + (-1)
となり、合計0。yが0より大きければ発火(スイッチが入る)だから、当該女性の恋愛スイッチは入らなかった。
このバイアスの値をいじってみることで、恋愛スイッチの入りやすさが変化することを確認する。例えば -0.5 をセットする。
(*2)の式に代入すると、
y = 1 * 0.3 + 1 * 0.4 + 1 * 0.3 + (-0.5)
となり、合計0.5。yが0を超えているから当該女性の恋愛スイッチが入った。厳密には当該女性の「恋愛発火要素グループ」ニューロンが発火した。
発火を繰り返すとシナプスの結合強度が高まっていく(より優先度が高くなる)。
という具合。
この単純パーセプトロンでは線形分離可能な判定しかできない。要は○○を超えたらON、○○以下ならOFFといった判定のみ。
そこで先日の『義務教育のプログラミング的思考とは。エクセルで考える。その2。』の考え方が基本となり、「7以上なら」とか「7を超えたら」と線引きできるように設計する。
作り始めた後で変更するのは難しいので最初が肝心。言い換えると、考える人と作る人という役割が決まり、将来的には頭脳労働と単純労働が極端化するだろうことが見て取れる。
もちろん人間の脳がこれほどまでに単純なはずもなく多層パーセプトロンもある。
例えば「恋愛発火要素グループ」(前)と「オシャレ発火要素グループ」(後ろ)が直列につながっていたとする。その場合、「恋愛スイッチが入ったらオシャレしたくなるかどうかの判定に入る」という思考回路であり、恋愛スイッチが入らなければオシャレなんて検討もしないことになる。
※昔から使われている「思考回路」という言葉の本質的な意味が伝わりやすいんじゃないだろうか。
或いは、「恋愛発火要素グループ」と「オシャレ発火要素グループ」が並列(同列)にあり、なおかつ後列グループの「ショッピング発火要素グループ」がその2つの出力結果を入力情報として受け取っていた場合、「恋愛スイッチとオシャレスイッチが入ったら、ショッピングしたくなるかどうかの判定に入る」という思考回路であり、恋愛とオシャレスイッチが入らなければショッピングモードは作動しない。
ヒトの脳にはこのグループが数え切れないほどあり、それぞれが相互作用していて、組み合わせも優先度も人それぞれ。
Aが発火しないとBの判定に入らない場合、Bの階層はAよりも深く、Aよりもスイッチが入りにくい。AとBが発火しなければCの判定に入らないのであれば、Cはますますスイッチが入りにくい。
というわけで次は多層パーセプトロンの考え方を用いて、思考の偏り・変質性について考えてみる。
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