「【第108回 腸内細菌と自閉スペクトラム症】こんなにも面白い医学の世界 からだのトリビア教えます|プライマリケアと救急を中心とした総合誌:レジデントノートホームページへようこそ - 羊土社」

自閉スペクトラム症の子どもたちの多くには,慢性的な腹痛,消化不良,下痢,便秘など,消化器系の問題があることが知られており
最初の2〜3週間は腸洗浄や抗菌薬などで元の腸内細菌を消し,その後7〜8週間かけて腸内細菌叢移植を毎日実施し,2年間追跡調査したところ,治療を受けた自閉スペクトラム症の患児は消化器系の症状に改善がみられたほか,患者に特徴的な「社会的ふるまい」にも45%も改善がみられたそうです

 興味深い。

 周囲に自閉スペクトラム症(ASD)の人が全く居ないので実際“特徴的な「社会的ふるまい」”を細かく観察する機会がないが、腸内細菌の入れ替えでふるまいが変わるとなると、先天的(遺伝)特性+後天的な環境(腸内細菌叢)の組み合わせでASD特性が発現すると考えられる。

 だとすれば何かの才能と似ている。先天的な資質を持っていても環境刺激がないと才能が開花(発現)しないことが多々ある。

 例えばサッカーの才能を持って生まれてきても、サッカーボールに一生触れることのない人生を送れば才能があることさえ知らないままになる。

 遺伝子としての先天性と後天的環境の組み合わせ。

 それと同じように、ASDの遺伝子を持って生まれてきても、生後(母親の胎内に居る間はまだ無菌)の菌曝露によって「特徴的」なASDになるか否かに影響があるということになる。

 ちょっと逸れると、体臭となる「皮膚ガス」の一部は皮膚の常在菌によって産生されるものなので、もしかすると犬などは既に(腸内細菌や皮膚常在菌が出す)ニオイで特性を嗅ぎ分けていたりするだろうか。

 約10年前に菌の勉強をした際には「歯周病(菌)が早産の原因になる」と言うと、「何の関係があるの?」という人ばかりだったが、今では全身疾患の根源として広く認知されるようになった。

 糖尿病も動脈硬化も心筋梗塞も脳梗塞も歯周病菌との関連が強く、心筋梗塞で亡くなった患者を解剖すると、心臓から歯周病菌が検出されるケースも知られている。

 機序としては、歯周病菌が血管内に入り、白血球(マクロファージ)が退治しようとする。そこで生じた菌の死骸のたんぱく質がプラークとなって血管壁にこびりつき(*1)、そこにコレステロールなどが蓄積していって石灰化し硬化する(歯垢[プラーク]から歯石化する流れと同じ)。血流が悪化し、かつ弾力を失った血管は高血圧に始まってあらゆる疾患を引き起こす。

 (*1)アルツハイマーの原因となるアミロイドβ(脳内のたんぱく質のゴミ)も似ている。

 早い話、歯周病とはちょっとした菌血症状態にあると言える。

 というわけで、もっとも菌の多い腸と口を綺麗にすることで、多くの疾患の予防となりうることから、オーラルケアへの投資は極めて低リスク・ハイリターン(健康エコ)だとこの10年間積極的に周囲にすすめている。

 ちなみに2016年の私の計算では、大腸菌は(邪魔するものがなければ)109回目の細胞分裂を迎える36時間と20分で地球の体積に達する。

 ということからも、放っておくと菌に支配されてしまうことがわかる。

 清潔に。風呂キャンはナシで(笑)。